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ポゥ、と右の掌に白く淡い光が満ちる。よーしいいぞ、でかした俺、今回はなかなかいけそうだ。ガッツポーズを取りそうになるのを、すんでのところで踏みとどまる。そのままそのまま、静かにしてろよ消えるんじゃねーぞ消えたら殺すぞコノヤロー。なんぞと胸のうちでぶつぶつと呟きながら、デュランは光をたたえた右手を真向かいに座るリースの腕にかざした。
「ヒールライト!!」
・・・が。
「「あ」」
声をハモらせる二人の前で、白い光はみるみるうちに光度を落とし、はかなく消えてしまった。少しの間をおいてから、どちらからともなくのろのろと視線を合わせる。そして、嘆息。
ここしばらく、このような状態が続いていた。
「あーもーちくしょー、まーた失敗かよ。どうにもうまくいかねえなあ」
短い沈黙の後、言葉を発したのはデュランだった。いかにもストレスが溜まっているという調子でばりばりと髪を掻きむしると、ばたりと派手に後方へと倒れ込む。
「昨日はちゃんと発動してたわ。もうほとんどできあがってるってことなのよ。あとはそれを安定させさえすれば、」
いいんだけど、ととりなす風のリースの声にもあまり覇気はない。というのも、彼女もデュランと同じ問題を抱えているからだ。クラスチェンジ後、パーティメンバー三人が三人とも多少の魔法を習得してはいたが、なにぶん魔法とは縁の薄い暮らしをしてきたメンバーである。慣れぬ事ゆえどうにも今ひとつ勝手が分からず、詠唱は完璧でも魔法の発動が不安定であることが多い。お世辞にも使いこなせているとは言えない状況であった。
ゆえにこうして、戦闘の合間を縫ってはちまちまと練習を重ねているのだが、成果は思うようには上がらない。もどかしいなあ、と声には出さず呟いたリースの脇で、デュランは寝転んだまま軽く両手を掲げた。
「ちっとばかし使えはしても、上手くはねんだよなあ、コレが」言ってから、再び顔をしかめる。「・・・や、俺のアレじゃ使えてるってことにはなんねえな」
仰向けになったままデュランはぼやいた。投げ出した両腕に、ふかふかした土と草の感触が心地いい。午後の明るい日の光が眩しくて思わず目を細めた。
「理論をそのままなぞりゃいいってわけじゃねえのかもなあ。俺、詠唱間違えてるわけじゃない・・・と思うし、たぶん」
「理論と感覚の折衷型なのかもしれない」何やら考え込むように口元に手を当てていたリースが、デュランに顔を向けた。「まめに練習してたら、いつか何かの拍子にできるようになってるとか、そんな感じになるような気がするわ」
魔法以外でもそういうことってあるでしょ、と言う彼女にデュランは首を傾けた。折衷型とは言っているが、彼女の発言はなかなかに感覚派寄りだ。だが、わからないでもない言い分である。
「まあな。これまでやりつけてねえこといきなりやるってんだから、焦ってもしょうがねえやな。気長に地道にいくか」
「そうね。 ─────ほら、ケヴィンも頑張ってるし」
見て、とリースが指し示す先では、デュランと同じく光のクラスにチェンジしたケヴィンが、これまた同じくヒールライトの猛特訓中である。しかし彼の場合、精霊を味方につければ気合いひとつで魔法が使えるなどと勘違いでもしているのか、呪文詠唱すら無視しているきらいがあった。結果として、当然魔法の完成度はデュランとリース以上によろしくない。
現に今も、「ほあー!とあー!きえー!」とか、わけのわからない掛け声と共に大変勇ましく両手を宙にかざして頑張っているが、当然ヒールライトは発動されない。小難しい表情でおのれの手を凝視しているケヴィンに、デュランは呆れながら声をかけた。
「だからさあケヴィンよ、おまえ詠唱すっとばしてんじゃねえよ。前にも言ったろ?それなかったらダメなんだって」
「? そうだっけ?」
気合いでどうにかなりそうな気がした、と無邪気に答える彼を見て、デュランは自分の想像が正しかったことを知る。おまえなあ、と肩を落として呟く彼の前で、「ようしそれなら」とケヴィンは決意も新たに(?)拳を握りしめた。そして。
「光れ!!走れ!!燃えろ!!っていうか弾け飛べー!!!」
「・・・だからケヴィンおまえそれ呪文じゃねーよ」
おまえ俺の話聞いてねえだろ、つーか弾け飛べってなんだよ、ヒールライトは攻撃呪文じゃねえよ。引きつりつつツッコミを入れたあと隣を見やると、リースと目が合った。ちいさく苦笑を浮かべている彼女につられて、デュランも思わず脱力したように笑ってしまった。
「なんであいつってああなんかなー」とぼやきながら再び方向転換した先では、ケヴィンが相変わらずちょっとズレた感じの訓練を絶好調継続中である。しまいにはなぜか「一撃必殺!!」などと喚き始めた彼をぼんやりと眺めながら、先は長そうだ、と両名が(示し合わせたでもなく)胸中で呟いていた。
Fin.
「習うより慣れよ」
inspired by 「デュラリーに関する100のお題 No.62:癒し」
※おまけ
「そういやさ、あんたって魔法練習するのに困るよな。逆ドーピング魔法だもんな」
「・・・能力ダウン系魔法ね」(←ルーンメイデン)
「なんだったら俺ら実験台にして練習してみるか・・・って冗談だよ冗談!なに詠唱モードに入ってんだよ!!」
「冗談よ」
「・・・・・。 あんたでも悪ノリってするんだな。つーか丸くなったなリース!俺は嬉しいぞ!」
「(怒るべきなのか、そうでないのか・・・っていうか正直どうでもよくなってきた)」
癒しということでヒールライトネタ。言うまでもないですが、兄さん:ナイト、坊ちゃん:モンク、リースお嬢さん:ルーンメイデンで。
しかし、なんかオチがNo.04とかぶってる気がする。ぎゃー!!