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お題一個目完成しました。
「デュラリーに関する100のお題」より、「1:出会い」です。
戦闘開始からどれくらい時間が経ったのかはわからないが、必死の攻撃の甲斐あって大蟹の怪物の動きは徐々に鈍り始めた。だが、最後の悪あがきのように牙を剥き出し、低く唸り声を発してこちらを威嚇してくる。
その顔面へ、二人分の渾身の攻撃を更に叩き込むとさすがに参ったらしい。しぶとく抵抗していたのが急速に力を失い、両の目はかたく閉じられ、その巨体は轟音と共に崩れ落ちる。倒れ込んだ場所で僅かの間息をついていたが、体を大きく二、三度痙攣させたのを最後に、怪物の姿は突然光に包まれ霧散した。
先ほどまでの騒動が嘘のように静まり返った洞窟内に、デュランとリースの呼吸音だけがやけに大きくこだまする。二人はどちらからともなくゆっくりと顔を見合わせたが、先に口を開いたのはデュランの方だった。
「なん、とか、片付けた、な」
「ええ」
頷くリースの顔は汗と埃にまみれている。彼同様、手足はもちろんのこと肩口や首筋にも大小さまざまの傷をこしらえてはいたが、その立ち姿はしゃんとしたものだった。
「あんた、やるなあ」
思わず口をついて出た言葉に、リースは瞬いた。だが、上がってしまった呼吸を整えるのに少々手間取っているらしく返答はない。デュランもまだ肩で息をしていたが、それでも何とか次第に落ち着きを取り戻しつつあった。額に滲む汗を大雑把に拭ったあと脇に立つリースに視線を戻し、そこでようやく意識的に彼女を見つめた。
「・・・なんか、アレだよな」
突然、前後になんの脈絡も無いことを言い始めたデュランを、リースは訝しげな面持ちで見上げた。そんな彼女の前で、デュランは剣の露を軽く払いつつ言を継ぐ。
「俺、あんたの顔とか今までまともに見たことなかったな」
や、ほら、出会ってからこっちいろいろ忙しかったからじっくり観察する暇なかったし。そう言われて、リースはやっと得心がいった顔になった。それもそうね、ばたばたしてたものね。でも、それにしても観察って何なの。
苦笑混じりのリースの口調は穏やかだった。それに特にいらえは返さず、デュランは改めて彼女を眺める。ずいぶんと上背があるな、というのが最初に浮かんだ感想だった。そういえば戦闘員だったよ、とひとりごちる。そして、皮鎧に槍という勇ましいいでたちや今回の戦い振りとは裏腹に、その容貌が実は可憐なものであることにもようやく気がついた。
「────喉、乾かねえ?」
何やら、今初めて彼女に出会ったような感覚を味わいながら立ちつくすデュランからようやく出てきたのは、そんな言葉だった。
Fin.
「時間差的邂逅」
inspired by 「デュラリーに関する100のお題 No.01:出会い」
洞窟の前で出会ったときは、たぶん二人ともお互いのことろくに見てないと思います。
んだもんで、最初のボス戦後がほんとの出会い。