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リース様、と、見知らぬ国の人々が呼ぶ。嬉しげに切なげに、そして慕わしそうに。
その一人一人に真摯に答える彼女を、デュランはぼんやりと見ていた。
最初にその呼び方を耳にした時は、一体何事かと思った。何だってリースが様付けで呼ばれているのかと正直呆気に取られた。一拍も二拍もおいてようやくその理由に思い至る。そう、しょっちゅう忘れているその事実。王女様。
まあ実際どうでもいいことだしな、とデュランは胸の中でひとりごちる。忘れがちになるのも無理はない事象だ。彼にとっては、リースが頼れる仲間であることの方が彼女の出自うんぬんよりもはるかに重要な意味を持っている。
だが、こうしてローラントの生き残りの人々に囲まれているリースを眺めていると、そういった普段はまったく気にもとめていないことを思い出す。リースが、彼らの姫だということを。
(リース様かー)
慣れない、といえば語弊があるような気がする。だが、今の自分の感想を言葉に表すとすればこれが最も近いもののように思えた。そこまで考えて、ふと視線を感じる。胡乱げに眉をひそめたシャルロットが、何やら気味の悪い物を見るような目つきで後ずさりしかけていた。無理もない。
「デュランしゃん、なんかぼけっとしててめのしょうてんさだまってなくてきしょくわるいでち」
「黙れクソガキ」
至極もっともな意見を述べたシャルロットの脳天に拳骨を落とすと、デュランは軽く宙を仰いだ。いだいいい~このかよわいシャルロットちゃんになにをさらすんでちかああこのばかぢからー!おーぼーおとこー!!とかいう彼女の金切り声を聞きつけたと思しきリースが、驚いたようにこちらを振り返る。
そのリースに勢いよく飛びついていくシャルロットの背を眺めながらデュランは、何か聞かれたら適当にごまかそう、などとかなりいいかげんなことを考えていた。
リース様、と見知らぬ国の人々が呼ぶ。
しかし自分は、その呼び方はどうにも落ち着かない、と改めて思った。
Fin.
「どうでもいいことのはずなのに気にし始めると妙に落ち着かなくなる、その」
inspired by 「デュラリーに関する100のお題 No.17:騎士と姫」
リースはローラントの皆さんの姫でデュランの姫じゃないとか、特に庇護すべき存在じゃないとか、
あとデュランはリースの日常でのちょっとした所作に、躾の良さとはまた別の奇妙な気品を感じて「あれっ」と思うときがあるとか、そういうのを書こうとして失敗したくさいブツ。